「晴」が息を引き取りました。
2022年7月2日
昨年12月に原発被災地の福島県飯舘村から我が家に迎えたばかりでした。
当たり前に思える1日1日は宝物。
いつもいつも今を大切にしてください。
晴のいた毎日が特別な日
我が家に来てたった半年余り、病気と向き合いながらも晴は家族の絆を深めてくれました。
遠く離れて暮らす晴を訪ねたこと
私の想いが伝わったと感じられたこと
晴が私を選んでくれたと思えること
探るように少しずつ私への信頼を育ててくれたこと
一喜一憂を重ねて、晴は私の特別な存在になっていました。
どの時間も一度だけ
戻ることのない時間たち
晴のいた毎日が特別でした。
8年の野良猫ぐらし。厚い雲に隠れた元飼い猫の心
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晴が生きた証を残したくて、私は彼女を綴ります
晴は、原発被災地の福島県飯舘村から我が家に来た、元飼い猫。
故郷での名前は「ミケ」。
解体された生家の数軒隣の餌場で、私はミケと出会いました。
野良猫のように暮らして8年、当時のミケは警戒心の塊でした。
彼女の過去を知るまで、彼女が人と暮らしていたとは思いもしませんでした。
ある時、私はミケの姿を動画に収めようと、カメラを置いたまま餌場を立ち去りました。
ご飯を食べに出てきたうれしそうなミケ。
彼女から漏れ出す感情に、私の心は揺さぶられました。
ただご飯が食べられればいいの?
ただ生きていればいいの?
300km離れたミケに2年間の片思い
それから、私は毎週2日ミケを訪ねました。
遠ざかって行く彼女の背中に声を掛けました。
草むらに潜む彼女に話しかけ、名前を何度も呼びました。
半年ほど経つと、ミケは毎回姿を見せるように。
更に数ヶ月、ミケの逃げ足が少し遅くなりました。
常にミケと私の間には、絶対に私の手が届かない空間や障害物がありましたが、
ミケの心の変化を私は感じていました。
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ミケに声をかけ始めて1年ほど経った頃、私の手が届く距離までミケに近づけました。
1度だけ私の指先が彼女の頭に触れました。
しかし、ミケは再び手の届かない猫になりました。
私にはミケの心境がわかりませんでした。
やむを得ない事情はあったかもしれません。
でも、人間は一度ミケを裏切っています。
ミケの信頼を得るのは簡単なはずはありません。
私はミケを訪ね続けました。
時間をかけて少しずつ少しずつ、ミケは私の気持ちを探っているかのように見えました。
でも、ミケの心の雲間から漏れ出す光が強くなるのを私は感じていました。
誰にも頼れず閉じこもっていた頃の自分に、私はミケを重ねていたのかもしれません。
たったひとりでも寄り添ってくれる人がいるなら、世界は変わります。
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更に1年の時が流れました。
彼女はご飯を用意する私の側まで来るようになりました。
彼女は私の手からおやつを食べるようにもなりました。
長い時間がかかりましたが、私の想いはミケに伝わりました。
ミケへの片思いは、私が毎週片道300kmを往復する大きな動機のひとつでした。
何かが起こる前に、ミケを家族にできていたらと悔やんでいます。
しかし、コロナ禍で自分の足元が揺らぎ、福島訪問を続けるだけで精一杯でした。
3.11から11度目の冬を迎える頃、ミケは酷い風邪をひきました。
真冬は連夜氷点下5度を下回ります。歳を重ねたミケにはあまりに厳しい季節。
私はミケを家に連れて行くと決めました。
捕獲器に見向きもしないミケの保護に時間がかかりました。
クリスマスの1週間前にやっと、ミケは私の元へ来てくれました。
私が置いたケージの中へ自ら歩みを進め、普段どおりおやつを食べるミケの姿を見て、
ミケが私を選んでくれたと感じました。
原発被災地での10年、ミケはたくさんの人に支えられました。
ミケに関わってくださった方に感謝いたします。
曇りのち晴れ 10年ぶりの飼い猫ぐらし
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彼女の新しい名前は、晴(はる)。
これからは、心晴れやかに暮らしてほしいと願いを込めました。
我が家に来てすぐ、晴は私の掌に頭をあずけてくれました。
場所が変わっても、晴は私をわかっていました。
晴と家族になれて、私はうれしくてたまりませんでした。
晴の体調は回復していきました。
しかし、晴に穏やかな時間が訪れると思った矢先、彼女の鼻が腫れてきました。
珍しい病気の疑い。
症例が少なく治療方法がわかりませんでした。
病が進行しないよう願いながらの日々。
晴は病気を感じさせない日々もありました。
不安を抱きながらも、新しい暮らしを気に入ってくれた晴の姿に、私は目を細めていました。
晴は撫でられ好きになりました。
晴は猫団子の一員になりました。
晴はご飯待ちの最前列に顔を出すようになりました。
晴は抱っこさせてくれるようになりました。
毎日、晴の心が発する光を感じて私は幸せでした。
晴との別れ
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何年も何年もそのままの時間が流れて欲しかった。
もっともっと晴と暮らしたかった。
しかし、私の願いは届きませんでした。
晴の体調が悪化し、緊急入院。
酷い貧血と低血糖、命にかかわる状態。
晴と同時期に家に迎えた仲間の白猫「ハク」の力を借りて、輸血。
一旦最悪の状態を抜け出したものの、再び悪化。
晴が病気を打ち負かす方法が手詰まりとなってしまいました。
私は晴を連れ帰りました。
晴の家。
ここには仲間がいます。
みんな晴の家族です。
声をかけ触れるほか、私が晴にできることはありませんでした。
翌朝、仕事に出かける前に横たわる晴の頭をなでました。
晴は私の掌に頭をあずけてくれました。
晴が生きようとする限り、いつも通り晴に寄り添おう。
沈みきった私の心に、晴は光を灯してくれました。
しかし、私の帰りを待たずに晴は旅立ちました。
心に穴が開く、その意味を知りました。
記憶の中の晴に微笑みかけると、涙があふれます。
晴に膝に乗ってもらいたかった
晴と一緒に眠りたかった
あなたが家族になってくれて、私は幸せでした。
はじめて私の足元に体を寄せたあなたは遠慮がちでしたね。
あの時のあなたの子供みたいな目を私は忘れません。
ご飯待ちの最前列に顔を見せたあなたも、
布団でみんなと猫団子になっていたあなたも、
私は覚えています。
同じ屋根の下にあなたがいるだけで、私がどれだけ心穏やかにいられたか知っていますか。
もっと一緒にいたかった。
でも、もうがんばれとは言えません。
あなたと出会えて、私はうれしかったです。
晴ちゃん、ありがとう。
時間は巻き戻せません。
だから、私は今を大切にしたい。
あなたも、当たり前に思える今を大切にしてください。
ご支援のお願い 原発被災地の犬猫訪問の再開を目指しています
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現在休止している、原発被災地の犬猫を訪ねる活動の再開を目指しています。
今年3月まで3年半ほど、ほぼ毎週の原発被災地訪問を続けていました。
毎週2日の現地滞在、準備と片付けの時間まで入れると3日分の時間。
心身疲労の蓄積により、活動、生活、仕事のバランスを保てなくなっていきました。
そして、コロナの影響が重なり活動資金が枯渇してしまいました。
多くの方からの応援と多少の借金で、どうにか活動を続けていましたが、自身の生活が崩壊する手前で一度足を止めました。
昨年終わり頃には、活動休止が頭に浮かんでいました。
その前に晴のほか、「ハク」「あまえ」「凪」3匹の猫を連れ帰りました。
私が特に気にかけていた餌場の猫たちです。
とはいえ、現地で私の訪問を待ってくれていた犬猫を想うと、苦渋の決断でした。
この数ヶ月、体を休めながら活動再開の準備を進めていました。
しかし、今回の闘病で振り出しに。
車検等の出費も重なり、活動資金を貯めるのに苦労しています。
ほぼ毎週の福島訪問を続けると年間の費用は100~150万円になります。
自身の手に余ることへの取り組みに、賛否があるのは承知しています。
私自身もこれ以上の無理は難しいと考えています。
ですが、晴との別れで今の大切を改めて実感しました。
原発事故から11年余りの時が流れ、当時から顔見知りの犬猫はみな高齢です。
限りある時間を生きる彼らに寄り添いたいとの思いがあります。
私の想いや活動にご賛同いただけましたら、どうか私に力を貸してください。
我が家の何匹かの猫たちの体調に気がかりも出てきましたので、
いつからどれくらいできるか今はわかりませんが、できるだけ早い現地の犬猫との再会を目指します。
応援をどうぞよろしくお願いいたします。
追記
記事公開後、ご心配の声をいただきました。
ありがとうございます。
ご心配をお掛けしてしまい申し訳ありませんでした。
私は元気にしております。
我が家の猫達を守ることを最優先に、無理は禁物と肝に銘じつつ活動再会を目指していきます。
●クレジットカードでのカンパ
●振込みでのカンパは以下の口座までお願いたします。
カンパ口座 |
楽天銀行 ジャズ支店 普通 4560150 カミムラ ユタカ |
ゆうちょ銀行 〇〇八(ゼロゼロハチ)店 普通 8305548 カミムラ ユタカ |
郵便振替 10070-83055481 カミムラ ユタカ |
●フードのご支援
現地の犬猫がよく食べるフードのリストです。
どうぞよろしくお願いいたします。